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【 まだまだ子供 】

 [物語] お銀

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【前章】 

 
一年。
湯婆婆からだされた条件。それは一年タダ働きするだけだった。
そうすれば外の世界に出でもよい、と湯婆婆は言った。
 
 


【1 】

   
―――まさかこんな簡単な条件だとは・・・。
ハク自身も驚いていた。もっとキツイ条件だと思っていたのだが
こんなに簡単な条件で済んでしまったことに疑問を持ったときもあった。
けれどもそれが湯婆婆の優しさだと気付くのに時間はかからなかった。
「今日で一年目だ・・・・。さあおいき」
「・・・・ありがとうございます」

ハクは急ぎ足でトンネルへと向かう。
―――会える!もうすぐ千尋に会えるんだ!
ハクは自然と喜びに満ちた顔になる。喜びを抑えきれない。


そしてトンネルを抜けた。
急に寂しさがこみ上げる。
「・・・今までお世話になりました」
トンネルのほうに向きを変え、ハクはぺこりとお辞儀をした。
千尋の世界に戻れるということは・・・・
同時に湯屋の人々との別れでもあった。
「さようなら・・・」
ハクは前に進みながらも時折トンネルのほうへと目をやる。
しかしトンネルはもう無い。それでも目をやる。

トンネルが見えなくなり、ハクは走り出す。
自分の身体に魔法をかけ、年頃の子供らしい服に変わる。

―――もうすぐ千尋に会える。
喜びと寂しさを抱えながらハクは町へと降りた。
 


【2】

 
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン・・・・
「起立!礼!」
クラス全員『さようなら!』
「千尋!一緒に帰ろう」
「うん」

千尋はもう五年生となった。友達もたくさんいる。
「あ〜・・・ねえ千尋?今日のテストどうだった?」
「あー・・・あの抜き打ち?ン〜普通かな・・」
いつも通りの日常。いつもと同じ帰り道。

―――千尋。
「!?」
「どうしたの千尋?」
「え、あ・・・な、なんでもない!」
「でも・・・」
「大丈夫だって!心配かけてごめんね」
千尋は腕を大きく伸ばし、平気だよ、と言う。

「じゃあまた明日〜バイバイ千尋」
「また明日ー」

「ただいま〜」
「あら千尋・・・お客さんが来てるわよ」
―――お客様?誰だろう。
「あんたの部屋にいるから」
千尋はお客様の正体を考えながら自分の部屋へと向かった。

コンコン
「失礼します・・・」
「やあ千尋」
「!?ハ、ハ、ハ・・・」
―――ハクー―――!?
「どうしたの?そんなに驚いて」
「だ、だって・・・」
「迷惑?」
ハクは不安そうな顔になる。
「そ・・・そんなこと・・・・」
ハクはほっと胸をなでおろす。
「良かった」
ハクに笑顔が戻った。

荻原夫妻の会話。

「あの子にも彼氏がね―・・・」
「彼氏!?あの男の子は彼氏なのか!??」
「だって私あの男の子に会ったこと無いもの。友達だったら紹介されてるわ。
それだったら・・・」
「父さんは認めんぞ!あの子はまだ小学生じゃないか!!」
「いまどき小学生で彼氏なんて当たり前よ。それにあの男の子カッコいいじゃないv
娘の彼氏にしちゃ上出来よ」
「し、しかしなぁ」
「いきなり結婚するわけでもないんだからいいじゃない。
貴方もいい加減に娘離れすれば?」
「う〜・・・」

どうも納得がいかない父であった。
 


【3】

 
「じゃあまた明日」
「またね。ハク」
もう夜中の九時になり、さすがに
これ以上いるのはいけないと思い、ハクは家に帰った。

「また明日・・・か」
また明日。彼が自分がいる世界にいるということが実感できる言葉。
―――ふふ・・・。
喜びで胸がいっぱいになり、自然と笑顔がこぼれた。

「また明日―♪」
ハクが言った言葉を嬉しそうに繰り返し、千尋はその日心地よい眠りについた。

「いってきまーす!」
朝の七時三十五分。千尋は家をでた。

小学校を行く途中に中学校がある。
名は市立湯葉屋中学校。
「ここにハクが通ってるのかぁ・・」
ハクの見掛けはどう見ても中学生。魔法をかけてもそれ以上若くならなかったらしく、
仕方なく近くの中学に通うことにしたらしい。
「ハクもてるだろうな・・・」
―――あの容姿だからなあ・・・。
少しハクの心配をしながらも千尋は学校へと向かった。

そして、千尋の予想は当たっていた。


湯葉屋中学。

「ハクく〜んvv好きな女の子のタイプとかある〜v」
「好きな食べ物は〜v」
―――はあ・・・。
ハクは大きくため息をつく。周りの女の子はそんなことをお構いナシに質問を続ける。
正直ハクは人間が苦手だった。千尋との出会いによって「嫌い」から「苦手」に
変わったが、苦手は苦手。苦手な人間(千尋以外の人間)に囲まれた上
質問攻めではたまったものではない。
「ねえ・・・ハクくん・・・」
「・・・ちょっとごめん」
「あ、どこいくの〜?」
「私たちもついていくv」
「ごめん・・・・一人にさせてくれ」

ガララ・・・(ドアを開ける)バタン(閉める)
「女子〜あんなに質問するから転校生怒ったんじゃねえの〜?」
「うっさいわね男子!!あ〜ん・・・ハクく〜ん(泣)」

「はあ・・・・」
―――まさか人間の女の子があんなに積極的だとは・・・。
一時間目にしてかなりの体力を失い、これからの学校生活に不安を覚えるハクだった。
 


【4】

 
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン
「起立!礼!」
クラス全員『さようなら!』

「千尋〜一緒に帰ろv」
「うん」

「千尋顔色イイね〜何かいいことでもあったの?」
「ふふん♪当たり〜v」
「え!何何!?教えてv」
「秘密v」
「あーズルーい!!」
「えへへv」

「じゃ!また明日!」
「バイバイ千尋〜」

今日も一日の日課が終わった。後は先生から出された宿題だけ。

どよ〜ん・・・
「・・・・ハク?」
まるで世界の終わりでも来た様な顔をしたハクがそこにいた。
湯屋にいたころとは想像もつかない顔だ。
「千尋・・・。人間の女の子とはずいぶんと積極的なんだな」
「・・・やっぱり質問攻めとかにあったんだ」
「これからの学校生活に不安すら感じるよ・・・」
あのハクをここまで悩ませるとは・・・。恐るべし日本女子。

「ハクは何処に住んでるの?」
「この近くだよ。あの少し古びた屋敷」
「・・・・あそこって・・・」
「町で評判の幽霊屋敷だ」
「大丈夫なの?」
ハクは無言で頷く。
「私は竜だからな。幽霊ごときに負けはせんさ」
「そ、そう・・・」
千尋の心境は複雑である。

「ハクくーんvv」
「あ、あの人は・・・!!」
ハクは嫌なものが来た!という顔になる。
「ハクくんvこれからハクくんの家で遊んでもいい?」
「え・・・いや」
「え?いいって?やった―vじゃ、遊びましょv」
「ち、ちが・・」
半ば無理やりにハクはクラスメイトに引きずられた。
その姿は散歩を嫌がる犬の姿を彷彿とさせる。
「ち・・・千尋」
クラスメイトの眉がピクリと動く。
「・・・あなた誰?」
「萩原千尋です・・・」
「私、秋名由井奈。あなたハクくんの何?」
「友達・・・」
ハクの頭はハンマーにでも殴られた感覚に陥った。
―――千尋鈍感なのか・・・(泣)色恋沙汰には鈍感なのか・・・。
ショックの色を隠せないハクは由井奈に抵抗もなく引きずられていく。
―――今のは痛い!痛い言葉だったぞ千尋・・・。
千尋の「友達」宣言がよほど効いたのかハクは抵抗すらしない。
「由井奈さん!!ハクは私と遊ぶの!!」
「千尋?」
「・・・・友達なんでしょ?」
「友達と遊んじゃいけないの?」
二人の間に冷たい風が流れた。
―――これが女の戦いなのか・・・。
ハクは背中に冷たいものを感じながら千尋が引き止めてくれたことに感謝した。

―――ガキのくせに・・・・(←中一)生意気!
―――何よ!クラスメイトだからってハクを無理やり連れて行くなんて許さないんだから!!
「凄い・・・(汗)」
女の戦いは夜七時半まで続いた。
その日、千尋と由井奈は両親にこっ酷く怒られたらしい。
もちろんハクは怒られなかった。(両親いないし)

ハクにとって前途多難な生活の幕開けでもある一日であった。
 


【5】

 
萩原千尋の一日はこうして始まる。
7時起床。
7時15分着替える。
7時25分歯を磨く。
7時28分顔を洗う。
7時30分ご飯を食べる。
7時50分登校。

竜川ハクの一日はこうして始まる。
6時起床。30分間ポケ〜っとしている。
6時45分歯を磨く。
6時53分顔を洗う。
7時カバンの中身のチェック。
7時10分着替える。
7時25分今日の天気予報を見る。ついでにニュースも。
7時40分登校。


8時、千尋、ハク合流し、途中まで一緒に登校。

ハク、8時45分より授業開始。
千尋、8時40分より授業開始。

ハクサイド

由井奈「ハックく〜んv一緒にお昼食べよv」
ハク「菅原!!一緒に食べよう!!」(逃げる)
菅原「大変だなお前も・・・」(同情)

千尋サイド

友達「千尋。一緒に食べよv」
千尋「うんv」
男子「萩原〜昨日彼氏と歩いてたろ〜?」
千尋「なっ・・・・・///」
男子「あれ〜?図星か〜」
千尋「五月蝿いわね!さっさと給食食べなさいよ!!」

3時45分千尋下校。
4時10分ハク下校。

二人の一日はこうして始まり、終わる。
 


【6】

 
ハクは悩んでいた。
その原因は秋名由井奈。彼女の素行にある。
いつも千尋と一緒にいると何処からともなく現れ、邪魔をする。
一度きつく言ったほうがいいのかもしれない。

―――それもなんか可哀想な気もするしなあ・・・。

彼女からすればハクが好きな余りにする行動なので、
千尋に片思い(?)する彼から見ると共感できる何かがある。
しかしこのままにして置けば千尋との間はことごとく邪魔され、
何の進展も無く時間を無駄にすごすことになってしまう。

―――しょうがない・・・。

ハクは由井奈に自分の正直な気持ちを言うことにした。




「ハックく〜んvv」
「秋名さん・・・・ちょっと屋上に来て」
「えv何何vや〜んふたりっきりぃ〜?」
何も知らない由井奈は屋上に連れてかれた。



―屋上―

「秋名さん・・・私は千尋が好きなんだ・・・だから君のことは・・・」
「そんなの気にしないもんvそれにあの子の何処がいいの?」
「千尋は・・・ありのままの私を受け入れてくれる」
ハクは千尋が初めて湯屋にきたことを思い出しながら言う。

―――あの子は・・・・本当に受け入れてくれた・・・。

千尋が来なかったら多分自分は一生湯婆婆に名を奪われたままになり、
一生あの世界から出られなかっただろう。それに人間でありながら湯屋の
人々の心を解きほぐした。それに私の心も・・・・。
「わ、私だって受け入れられるわ!」
「・・・私がもし人間じゃないと言ったら君はどうする?」
「え・・・?」
由井奈はきょとんとした表情でハクを見つめる。
「どうする?」
「う・・・受け入れるわ!!」
「嘘だね」
「どうしてよ!!」
「すぐに答えたからさ。普通そう簡単に答えは出ない」
「う・・・ぐ・・」
由井奈は図星を突かれ、言葉が出ない。
「千尋はね。そんなことすら考えずに私を受け入れたんだ」

―――本当なら拒まれてもいいのにあの子は私の正体など気にも留めず
いつも通りに接してくれた・・・。竜とかそんなことを考えずに「ハク」として接してくれた・・・。

「だから私は千尋が好きなんだ・・・・」
「・・・私じゃ駄目なの?」
「・・・・千尋じゃなきゃ駄目だ・・・」
由井奈は目から大粒の涙をこぼし、声にならない声で言う。
「じゃっあ・・・わたっ・・・しはおうぇ・・んす・・から」
ハクは何を言ってるのか聞き取れないが由井奈がなんていいたいのかはよく分かった。
「ありがとう・・・」



今日、由井奈の恋は終わった。


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【7】

 
「荻野・・・俺お前が好きだ・・・・」
この言葉が始まりだった。





「千尋−今日抜き打ちテストがあるんだってー」
「嘘!!?やだ私予習してないよー」

いつもの言葉、いつもの日常。

「千尋−ごめん私今日日直なんだ・・・」
「良いよ♪じゃあ今度は一緒に帰ろうね」

いつもの言葉、いつもの返事。

「荻野!!」
「・・・・真井倉・・・」

それは突然に来た。

「荻野・・・俺お前が好きだ・・・」
「え・・・」
「へ・・・返事はいつでもいい!!嫌だったら嫌で良いんだからな!!」
「ちょ・・・真井倉・・!!」
「じゃなっ!!」
彼は耳まで顔を赤くし、走り去っていった。
「・・・・どういうこと?」
彼はいつも自分をからかう嫌な奴だった。
その彼が自分を好きだと言う。まだ幼い千尋には理解が出来なかった。

「千尋?」
千尋の身体はビクッと震える。
「ハ・・・ハク・・」
「どうしたんだ?こんなところにぼ〜っと立ってて・・・」
千尋はなぜかハクに申し訳が無い気持ちになった。もちろん彼女に非は無い。
告白されることなど普通予想できる筈がない。しかし理屈ではないので。
ただ・・・・罪悪感だけが心にあった。

いつもの日常、いつもの会話。
でもそれはいつまでも続くものではない。
それが狂うときは突然に来る。
今日、それに歪みが生じた・・・。


NEXT
 


【8】

 
翌日。


「・・・荻野おはよう」
「・・・・お、おはよう」
「昨日のことは気にすんな・・・」
「ごめん私・・・・」
「気にすんなって・・・」


あの後、千尋は真井倉の家に電話をし、彼の告白を丁重にお断りした。
好きな人が居るのかどうかは分からない。でも・・・YESが言えなかった。

「千尋どうしたの?元気ないよ−・・・」
友達はみんな千尋を心配し、千尋の顔を覗き込む。
千尋は大丈夫!と言い腕を大きく上げる。しかしどこか無理をしてるということが
皆には分かってしまうが、あえて知らないふりをしてくれた。



「千尋。バイバイ♪」
「じゃあね・・・」
道の分かれで友達と別れ、友達はとぼとぼと歩く千尋を心配そうな目で見送った。

「千尋」
「・・・・ハク!?」
今日、彼は六時間。自分は五時間の授業。どう考えても変える時間が合うわけが無い。
しかし彼はここに居る。つまりそれは・・・・。
「ハク・・・・サボり?」
「・・・まあね」
彼は魔法を使い自分の分身に授業を受けさせ、
本体の自分は先生の目に見つからないよう抜け出してきたのだ。
「・・・・・なんで私を避けるんだ?」
「・・・さ、避けてないよ」
千尋はとっさに目をそらす。
「それをわたしの目を見て言えるのか?」
言葉を失う。

「・・・れたの」
「?もっと大きな声で言って・・・」
千尋は自分の胸をぎゅうと抑え、言葉を出す。


「私・・・告白されたの・・・」




NEXT
 


【9】

 
「・・・・・・そんなことか」
「へ?」
千尋は拍子抜けした声を出す。
「私はそんなこと気にしないよ。
千尋が誰かに告白されるたびに気にしてたら身が持たないからね」
「?」
千尋はハクが言った言葉の意味をよく分からないのか、少し首をかしげた

実は千尋は何気にもてる。
その生命力にあふれた顔が皆を自然とひきつけ、告白予備軍が結構居たりする。
もちろんそんなこと千尋が知るわけが無い。
「で、でも・・・」
「千尋はどうしたいの?」
千尋は顔を少しあげ、ハクの目を見て言葉を発する。
「・・・・好きでもない人と付き合いたくない。だから・・・」
「だから?」
「ことわ・・・った」
ハクは内心ドキドキしながらも望んだ答えを千尋が言ってくれてほっとする。
「じゃあ・・・それで良いじゃないか」
「う・・・ん」
千尋は少しイラついてた。ハクの反応が千尋が望んでたのとは違う。
もっと嫉妬して欲しいという気持ちがあった。
「・・・・馬鹿」
「千尋何か言った?」
「何でもない!」
千尋はぷいと顔をそむけ、早足ですたすたと歩いた。

―――私ってまだまだ子供ね・・・・。

まだ素直になれない自分に嫌気をさしながら千尋はそう思った。







つまらないことを気にし、つまらないことでいじけたりする。

そして恋には鈍感な僕達は



まだまだ子供だ。



END
 


【考 察】

 
 
 
   

 


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